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田辺聖子「新源氏物語」中国語訳

 田辺聖子氏が今年度の文化勲章受章者八人のうちのひとりに選ばれたニュースが伝えられたのは二十八日、そして今日はその田辺氏の「新源氏物語」が中国語訳で出版されたとの報道がありました。
 毎日の記事では『「源氏物語」をこなれた日本語で訳した「田辺源氏」』と紹介されていましたが、ありていに言って単なる現代語訳とはかなり趣を異にしている。円地文子・谷崎潤一郎・与謝野晶子諸氏の「源氏」は忠実に原文を訳出したもの、それに対し田辺源氏は原文を圧縮したり表現を変えたりして現代人が読みやすいような形で、読者に提供したもの。一種、田辺氏の創作的な要素が見てとれるのですね。彼女自身が語るところによれば、『新しく小説として書くことは、身に余る苦しい作業でしたけれど「源氏物語」の一字一句とつきあって、紫式部のことやその周りのこと、登場人物のことを考えたりして遊ぶのは、これはもう本当に楽しいことでした。』
 もちろん大家らの現代語訳と田辺源氏とを比較してどちらが優れている、どちらが劣っているといった判断をくだすつもりはありません。先人の偉業があったればこそ現代風に小説化してみようという思いが湧き起こったと田辺氏自身が仰っています。
 田辺氏の著作には古典を勉強する上でかなり助けてもらいました。若い頃「新源氏」「文車日記」「古典の森へ」「百人一首」そして「蜻蛉日記」といった作品をむさぼるように読んだのは、古典作品自体の持つ魅力ばかりでなく、田辺氏のつややかな文体にも惹かれていたからです。優美ではあるけれど華美に流れることはなく、含羞を感じさせる表現にそこはかとなく色香を漂わせるような文体でした。「文体でした」と過去形で書くのは最近彼女の作品に接していないからで、この記事を機会に再びその本を紐解いてみようかなあ、という気になっています。

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